民泊はまだ儲かる?売上ではなく「利益」で考える民泊経営
「民泊で月100万円の売上がある」
そんな話を聞くと、かなり儲かっているように感じませんか?
しかし、月100万円売り上げていても、家賃や運営費用を差し引くと、ほとんど利益が残らない物件もあります。
一方で、売上はそれほど大きくなくても、安定して利益を確保できる物件もあります。
民泊市場では、宿泊需要がある一方で競合施設も増え、物件ごとの収益性を見極めることがますます重要になっています。
では、民泊は今でも儲かるのでしょうか?
結論から言えば、民泊で利益を出すことは可能です。ただし、売上が高いことと、儲かっていることは別の話です。
この記事では、民泊運営代行会社NEXSIAの視点から、民泊の利益構造と損益分岐点の考え方、そして「利益を出すために必要な宿泊料金」と「実際に予約が入る市場価格」の関係について解説します。
民泊は売上が高ければ儲かる?意外と見落とされる利益の話
民泊の収益性を比較するとき、よく使われるのが月間売上、稼働率、ADR(平均宿泊単価)といった数字です。
もちろん、どれも大切な指標です。
しかし、これらの数字だけでは、その物件が本当に儲かっているかは分かりません。
例えば、次の2つの物件を比較してみましょう。
| 項目 | A物件 | B物件 |
|---|---|---|
| 月間総売上 | 100万円 | 70万円 |
| OTA手数料 | 15万円 | 10.5万円 |
| 家賃 | 30万円 | 10万円 |
| 運営代行費 | 15万円 | 10.5万円 |
| その他月額経費総額 | 30万円 | 14万円 |
| 月間利益 | 10万円 | 25万円 |
| 利益率 | 10% | 約35.7% |
売上だけを見ると、A物件の方が30万円も多く、好調に見えます。
しかし、実際に残る利益はB物件の方が15万円多くなっています。
なぜ、このような差が生まれるのでしょうか。
その理由は、物件ごとにかかる費用が異なるからです。
民泊では、家賃や管理費、OTA手数料、運営代行費、水道光熱費、消耗品費、修繕費など、さまざまな費用が発生します。
特に賃貸物件で民泊を運営する場合、家賃は収益性を大きく左右する要素です。
高い宿泊料金で販売できる物件であっても、その分家賃が高ければ、必ずしも利益が多く残るとは限りません。
本当に見るべきなのは、「いくら売れたか」ではなく「いくら残ったか」です。
自分の民泊はいくら売れば黒字になる?損益分岐点の考え方
では、自分の物件が利益を出すためには、いくら売り上げる必要があるのでしょうか。
ここで重要になるのが「損益分岐点」です。
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになるラインのこと。
このラインを上回れば黒字、下回れば赤字になります。
民泊の場合、まず把握しておきたいのは次の3つです。
損益分岐点売上: 年間いくら売れば赤字にならないか
必要ADR: 想定する販売泊数に対して、平均1泊いくらで売ればよいか
必要販売泊数: 想定する宿泊単価で、年間何泊売ればよいか
この3つが分かると、単に売上目標を立てるだけでなく、その目標が現実的なのかを判断しやすくなります。
損益分岐点はどうやって計算する?
まずは、年間の固定費を計算します。
固定費とは、予約が入らなくても発生する費用のことです。
例えば、家賃・管理費が月20万円、その他の固定費が月10万円の場合、年間固定費は次のようになります。
(20万円+10万円)×12か月=360万円
次に、売上に応じて発生する費用を考えます。
例えば、OTA手数料が15.5%、管理代行費が総売上の15%であれば、売上から残る割合は69.5%です。
つまり、宿泊売上100万円に対して、これらの手数料を差し引くと69万5,000円が残る計算です。
この条件での損益分岐点売上は、次の式で求められます。
損益分岐点売上=年間固定費÷(1-OTA手数料率-管理代行費率)
360万円÷(1-0.155-0.15)≒518万円
年間約518万円の宿泊売上があれば、ひとまず固定費と売上連動手数料を回収できる計算になります。
ただし、これは清掃料金の収支やその他の変動費を除いた簡易計算です。実際には、清掃料金の徴収額と支払額の差、清掃料金にかかるOTA手数料、宿泊人数に応じた消耗品費なども反映する必要があります。
民泊新法か旅館業かも考慮する
住宅宿泊事業法に基づく民泊では、年間の宿泊日数が180日以内に制限されています。
そのため、旅館業とは違い一般的なホテルのように、365日営業できる前提で収支を計算することはできません。
例えば、先ほどの年間必要売上518万円を、販売泊数ごとに割ってみましょう。
| 年間販売泊数 | 黒字化に必要なADR |
|---|---|
| 150泊 | 約34,600円 |
| 180泊 | 約28,800円 |
| 290泊 | 約17,900円 |
※年間固定費360万円、OTA手数料15.5%、管理代行費15%を前提とした概算です。清掃料金の収支やその他の変動費は含みません。
この比較から分かること
同じ年間固定費でも、販売できる宿泊日数が増えるほど、黒字化に必要なADRは低くなります。
例えば、年間150泊では約34,600円が必要ですが、290泊販売できれば約17,900円でも損益分岐点に達する計算です。
ただし、住宅宿泊事業法に基づく民泊新法では年間180日が上限です。290泊は、旅館業法に基づく許可を取得するなど、年間290泊の営業が可能な施設を想定した比較になります。
必要な宿泊料金と、市場で売れる価格は同じではない
ここからが、民泊経営で特に重要なポイントです。
損益分岐点を計算すれば、自分の物件がいくらで売れれば黒字になるのかが分かります。
しかし、「黒字になるために必要な価格」と「ゲストが実際に予約してくれる価格」は、必ずしも一致しません。
例えば、ある民泊物件の収支を計算したところ、年間150泊販売するにはADR35,000円が必要だったとします。
ところが、周辺の類似物件の実際の平均宿泊単価が25,000円程度だったらどうでしょうか。
オーナーとしては35,000円で販売したくても、ゲストは25,000円前後で宿泊できる競合物件と比較します。
もちろん、設備や立地、レビュー評価などで差別化できれば、相場より高い価格で予約を獲得できる可能性はあります。
しかし、物件に明確な強みがない場合、周辺相場より大幅に高い料金を設定しても、予約が入りにくくなることが考えられます。
反対に、市場価格に合わせて25,000円まで値下げすれば予約は入りやすくなるかもしれませんが、今度は必要な売上を確保できない可能性があります。
つまり、高く設定すると予約が入らない。安くすると利益が出ない。
こうした状況は、単なる価格設定の問題ではなく、物件そのものの収益構造に原因がある場合があります。
家賃が高いからといって、宿泊料金を高くできるわけではない
民泊運営の現場では、物件の家賃や運営費用を考慮しながら宿泊料金を設定する必要があります。
しかし、ゲストはその物件の家賃がいくらなのかを知りません。
宿泊先を選ぶときに比較するのは、立地、広さ、設備、写真、レビュー、そして宿泊料金です。
例えば、同じエリアで似た広さの物件が並んでいた場合、家賃が高いという理由だけで、一方の宿泊料金を高く設定することは難しいでしょう。
ここで重要なのは、物件の採算から逆算した価格と、市場で実現できる価格の両方を見ることです。
民泊を開業する前であれば、周辺相場から想定売上を算出し、その売上で家賃や運営費用を回収できるかを確認する必要があります。
すでに運営している物件であれば、現在のADRと損益分岐点ADRを比較することで、収益改善の方向性が見えてきます。
PriceLabsなどの価格調整ツールで解決できる?
民泊運営では、PriceLabsなどのダイナミックプライシングツールを活用し、周辺市場の需要に合わせて宿泊料金を調整する方法があります。
曜日や季節、イベントなどに応じて価格を変動させることで、需要が高い日に安く売りすぎたり、需要が低い日に高すぎる価格を設定したりすることを防ぎやすくなります。
ただし、価格調整ツールは、物件の利益を保証するものではありません。
例えば、周辺市場で25,000円程度の需要しか見込めない物件に対して、採算を合わせるために最低価格を35,000円に設定したとします。
その結果、必要な利益率を確保できる価格設定にはなっていても、実際には予約が入りにくくなる可能性があります。
一方で、ツールが示す市場価格をそのまま採用すると、家賃などの固定費を回収できないことも考えられます。
だからこそ、価格調整ツールを使う場合でも、物件ごとの損益分岐点を理解しておくことが大切です。
市場の需要を見ながら価格を調整することと、その価格で利益が残るかを判断することは、別の作業なのです。
民泊で利益を残すために、まず見直したい3つのこと
では、損益分岐点と市場価格に差がある場合、何から見直せばよいのでしょうか。
1. 年間の売上と費用を把握する
まずは、月ごとの売上だけでなく、年間でどれだけ利益が残っているかを確認しましょう。
特に民泊新法の物件では、営業できない期間にも家賃などの固定費が発生します。
繁忙期に大きな売上があっても、年間を通じて利益が残らなければ、安定した経営とはいえません。
2. 市場価格と自分の物件のADRを比較する
現在の宿泊料金が、周辺市場と比べて高いのか、低いのかを確認します。
ただし、比較する際は立地だけでなく、広さ、宿泊人数、設備、レビュー評価、営業形態などが近い物件を選ぶことが重要です。
また、OTAに表示されている料金と、実際に予約された平均宿泊単価は異なります。
できるだけ実績に近いデータを参考にすることで、現実的な売上計画を立てやすくなります。
3. 価格調整だけでなく、物件の収益構造を見直す
市場価格と必要ADRに大きな差がある場合、宿泊料金だけで問題を解決するのは難しいかもしれません。
家賃や管理費などの固定費を見直せないか、物件の設備や写真を改善することで宿泊単価を高められないか、OTA運用に改善の余地がないか。
さまざまな角度から収益性を検討する必要があります。
それでも採算が合わない場合は、運営方法の変更や事業継続の判断も含めて考えることが重要です。
まとめ|民泊は「いくら売れるか」より「いくら残るか」
民泊は、今でも利益を出せる可能性のある事業です。
ただし、宿泊需要があることや、高い売上を記録していることだけで、儲かる物件だと判断することはできません。
大切なのは、次の3つを順番に考えることです。
① 売上から費用を差し引くと、実際にいくら利益が残るのか。
② 黒字にするためには、年間何泊、平均いくらで販売する必要があるのか。
③ その宿泊料金は、周辺市場で実際に予約が入る価格なのか。
この3つが一致して初めて、現実的な収益計画が見えてきます。
これから民泊を開業する方は、物件を契約する前に、想定売上だけでなく損益分岐点まで計算しておくことをおすすめします。
また、すでに民泊を運営している方も、一度ご自身の物件の利益構造を見直してみてはいかがでしょうか。
NEXSIAでは、民泊・宿泊施設の運営代行をはじめ、価格設定やOTA運用、収益改善に関するご相談にも対応しています。
「売上はあるのに利益が残らない」「現在の宿泊料金が適正なのか分からない」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
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次回予告|民泊運営会社のリアルな物件収支を公開!
家賃、OTA手数料、管理代行費などの費用を差し引くと、実際にいくら利益が残るのか。さらに、物件ごとの宿泊日数や清掃回数の違いも比較しながら、民泊経営のリアルな数字をお見せします。